ソーシャルゲーム業界に斜陽の兆候 元業界人が考える理由
2019年3月28日
いわゆるソーシャルゲームと言われるサービスの終了が最近になって凄い勢いで増えているようです。
ソーシャルゲームとは元々SNS上で展開するオンラインゲームの総称でしたが、近年では基本無料でプレイすることができて、様々なイベントなどを行いガチャなどを主な収益源とするオンラインゲームアプリ全般を指すことも多いようです。
ガラケー時代から業界にいて様々なサービスの栄枯盛衰や時代の変わり目を見てきた元業界人である私が現在のソーシャルゲームについて考えてみました。
斜陽の理由
開発費が回収できない
iOSやAndroidの最近のゲームアプリの開発費は軽く億を超えています。昔は「1億あれば」、「5000万あれば」、「3000万」あればという時代もありました。
グリーやモバゲー全盛のガラケーのソシャゲ時代ではそれこそ3000万で2~3か月で作るという時代でしたが、最近では月5000万の開発費で開発期間は短くても半年~1年かかります。
それだけで3億~6億かかっていますし、開発費が10億を超えることもめずらしくありません。
そしてローンチのユーザ獲得ために宣伝広告費も莫大な費用がかかります。
とあるIP(キャラクターなどの版権を利用した)物のゲームは、ローンチ時の月の売上が10億を超えているにも関わらず赤字でした。
この莫大な宣伝広告費が出せないと初期のユーザ数の取り込みができず、今後の売上が立たないのでサービスは死に向かっていきます。
サーバ費用や運営費用もバカにならないので、最近では挽回のチャンスがないと見るや早々とサービス終了に向かって動きます。
運営費も高騰
運よくローンチに成功したとしてもユーザをつなぎとめるために工数の掛かるイベントを少なくとも数週間に1度は開催しないといけません。
また多くのユーザが快適にプレイするためにサーバ費用もかさみます。
月に億レベルの売上があったとしても運営に関わってる人数が30人とか50人とかだったら、うまくやりくりしてもトントンくらいにしかなりません。
IP物の場合は売上から削られるのでもっと状況は厳しくなります。
開発会社が乱立しゲームを乱発
現在ソーシャルゲームを開発してる会社は本当にたくさんあります。
そして大手の会社は年にゲームを数本~数十本リリースしますし、大多数の小さい会社でも年に1本はリリースします。
物凄くたくさんのゲームが常にリリースされている状態になっているので、ライトユーザが新しいゲームの情報に触れる機会はほとんどありません。
ユーザから見るとすぐにその他多数の新しいゲームのリリース情報に押し流されてしまうという状況です。
そして新しいゲームはサービス終了の確率が高いのでユーザが既存のゲームから本気で新しいゲームに乗り換えるという行動には至りません。
ユーザとしてはリリース当初に気になったものは少し遊んでみますが、その後放置というゲームがほとんどです。
1ユーザが使える時間とお金は限りがあるので既存のゲームからそれらを奪うことはとても難しいのです。
開発会社同士で限られたユーザの時間とお金の奪い合いをしているに過ぎず、売上が0でないゲームが増えれば増えるほど1つのゲームの取り分が厳しくなっていってるという状況です。
ユーザのソーシャルゲーム疲れ
課金・無課金ユーザ共にソーシャルゲームに辟易してきているのを感じます。
無課金ユーザはちょっとした時間の暇つぶしに始めたはずなのに毎週のように繰り返されるイベントが苦行になってきます。
課金ユーザは最初楽しかったはずのイベントがだんだんと惰性での課金イベントになってきます。毎週繰り返されるイベントに課金した額を考えると引くに引けない状況に陥っていて、今のゲームを辞めるきっかけを探しています。
そして新しいゲームが出ても既存のどれかのゲームと似たようなゲームでしかないので、課金・無課金どちらとも 「乗り換える理由が特にない。今のゲーム続ければいいや」となります。
今のソーシャルゲームには個人的にアタリショックに似たものを感じています。
特にライトユーザはゲームでなくても通勤や通学、休み時間、ランチの注文待ちなどの時間にちょっとした暇つぶしさえできればいいので、Apple News+のようなサービスが出ればゲームをしなくなると思います。
Apple ArcadeやApple News+が日本でサービスを開始したら、大元のユーザ数というパイ自体が減少するので、益々ソーシャルゲーム業界は斜陽になってくる気がしています。
まとめ
ファミコン時代の全盛期に星の数ほどあった開発会社も、現在残っているのは大手数社とその下にある小さな下請け会社となっています。
ファミコンもゲーセンもソーシャルも、どのような業界でも大きく繁栄した後は一定レベルまで淘汰されて落ち着きます。
ソーシャルゲーム業界も大繁栄から淘汰の時代を迎えました。
業界はなくならないと思いますが、ソーシャル関連のゲームも会社も淘汰され残るところしか残らないと思います。
一定レベルまで淘汰されて底を打って安定した後は、例えばゲーセンというゲームのプレイスタイルのように1つの分野として存在はしていくと思います。
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